あまり知らない「土地境界」のお話~ 不動産の大事な「ミニ」知識 ~
いざ、土地や家を購入しようというとき。
または、建て替えや売却をしようというとき。
〝お隣との境界がはっきりしなくて困ることがある″ってご存知ですか?
実は、古くからの土地では案外起こっていることだそう。
今回はそんな、大切な資産である不動産の範囲を明確にする
「土地の境界」についてのミニ知識です。
すべての土地は、境界がはっきりしているわけではない(!?)
当社をはじめとする不動産会社(デベロッパー・開発会社)から土地建物を購入される方は、売買契約書にサインする前に、「重要事項説明書」という書面と、「公図」「地積測量図」という図面を受け取ります。
そして、「現地には、〈境界標(境界の目印)〉が正しく設置されています。万一、その〈境界標〉が失われても、法務局に届けられている地積測量図と座標データを基に、正しい場所に復元することができるので、安心です」というような説明を受けられると思います。
不動産(土地)というものは、「法務局」という国の役所に備え付けられている「登記簿」という台帳 (今は、ほとんどコンピューター化され、台帳というよりデータベースといったほうが似合っている気もしますが)で管理されているので、その場所や面積などもきちんとしているのが当たり前。。。と、思われるかもしれません。
ところが実際は、すべての土地がそのようにきちんと管理されているわけではない、と言ったら、驚かれるでしょうか。
時代とともに変化してきた土地の管理法。
土地・建物といった「不動産」は「資産(財産)」であり、自分の財産は「自己管理」が原則。 そこでその時代ごとに求められる基準は異なってきました。
たとえば、大きな土地からいくつかの土地に分けることを「分筆」といいますが、元々の土地全体の形・大きさをはっきりさせてからでないと分筆ができなくなったのは、なんと昭和62年3月から。
境界を「線」でなく現在のように「点」で管理しようと、地積測量図の記載が座標に一本化されたのは、たった11年前の平成17年からです。
それ以前は、「どこが境界線か?」という事より、「自分の土地は、ちゃんとこの面積があるかどうか」という事がより重要に思われていて(今でも、もちろん大切なことには変わりありませんが)法務局に届けられている図面に、面積計算に必要な「底辺×高さ」だけしか記載されていない場合があるのです。
これで「境界標」がなかったら、「昔のことをよく知っている人に聞いて、思い出してもらわないとお隣との境界がわからない」なんてことに。そんな問題が、今でも実際に起こっているのです。
大事な「境界標」ですが、設置は義務ではありません。
これほど重要な「境界標」ですが、分筆や、登記簿に誤って記載されている土地の面積を正しくする「地積更正」を行わない限り、設置は義務ではありません。
民法の223条には「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」と書かれているだけです。
要は「費用は半分ずつにして、境界標を設置してもいいですよ」ということ。
なんとも軽い取り決めですね。ここでも「自己管理」という原則が顔を出すのかもしれません。
一方で、一旦設置された境界標を、故意に壊したり移動させたりしたら、刑法で罰せられます。
(刑法第262条の2 境界標を損壊し、移動し、もしくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。)
他人の不動産を奪った者に対する刑罰が、十年以下の懲役ですから、金属のプレートやコンクリートの 杭がどれだけ重要なのか、よくわかりますね。
古くからの土地は、現在の基準で管理し直しておくと安心です。
そんな目で街を眺めてみると、驚くほど古い(ひょっとして戦前からある?)境界標が見つかるかと思えば、路地の奥などではどこまでが道路で、どこからが私有地なのかもはっきりしない場所も見えてきます。古い街並み・建物は素敵ですが、ひとつ見方を変えてみると、なかなか笑えない問題が眠っているのです。
そこで古くからの土地をお持ちの方は、今の基準で管理するため、現在の水準で測量した境界を確認する図面をつくるとともに「地積更正登記」などの手続きをとって法務局に届け出ておくと、転ばぬ先の杖(杭?)になるかもしれません。
大事な資産を守るためにも、心やすい不動産の専門家に一度相談してみられてはいかがでしょうか。